固定二候補の積分近似診断 · 2026年10月20日

積分参照で得点差は動いたが、
固定二候補の優劣は逆転しなかった

現在のベース方式はPMLを維持します。今回、音声品質・MOS・方式の採用は評価していません。

保存実装と、高精度で計算した同じLaplace式との差は約10⁻¹³でした。積分参照へ置き換えると、有限な二候補の得点差は約−0.0105〜−0.0154 nats動きましたが、厳密な優劣の逆転は0件でした。

これは保存された固定二候補の比較です。積分参照は誤差保証付きの値ではなく、候補全体を探索し直した結果でもありません。

同じ二候補を保ち、近似式の影響を切り分ける

対象は固定人工データの309窓です。各窓で候補f*=97.65625 Hzと、その2倍の2f*=195.3125 Hzを固定し、それぞれK=1〜10を扱いました。6180参照には同じ入力の再利用があり、重複を除いた計算対象は4180件です。4180件を独立した音声標本とは扱いません。候補周波数の原記録も保存しています。

保存実装のlogBFをS、同じLaplace式を高精度で評価した値をL、積分の有限精度参照A80をEと呼びます。LとEは80桁の保存値です。A80のAは積分経路の名前で、後述する履歴Aとは別です。

二候補の比較には、Kと事前分布をまとめた対数得点の差Dを使います。向きはD = G(f*) − G(2f*)です。Dが正ならf*、負なら2f*が優位、零なら同点です。natsは自然対数の単位です。Dを確率やF0誤り率へ読み替えません。

比較した事前分布は、初期値を固定したstatic、通常の確率値で保存された履歴A、対数値で保存された履歴Bの3つです。過去の追跡履歴の違いは、積分近似とは別の要因です。今回は履歴そのものを更新していません。

積分参照への置換は、有限Dを負の方向へ動かした

三つの差は、L−Sが保存実装と高精度の同Laplace式との差、E−Lが積分参照への置換の影響、E−Sがその合計に対応します。下表は保存済み集計の最小値・最大値を転記し、表示だけを丸めています。L−Sは約10⁻¹³、有限DのE−Lは約10⁻²と桁が異なるため、図にはE−Lだけを描きます。

有限DのE−Lは、static・履歴A・履歴Bのすべてで負。正確な範囲は直後の表に記載。
有限DのE−Lの保存範囲。両端は最小値と最大値であり、信頼区間や真の誤差の保証区間ではありません。Aは有限104窓、staticとBは各309窓です。
保存範囲(nats、6有効桁表示)
対象差の向き最小最大
個別のlogBFL−S-3.39162e-133.07372e-13
個別のlogBFE−L0.008002350.122117
個別のlogBFE−S0.008002350.122117
初期の事前分布(static)L−S-3.59573e-133.53569e-13
初期の事前分布(static)E−L-0.0154031-0.0104709
初期の事前分布(static)E−S-0.0154031-0.0104709
保存された履歴AL−S-3.29460e-133.28309e-13
保存された履歴AE−L-0.0149226-0.0104709
保存された履歴AE−S-0.0149226-0.0104709
保存されたlog履歴BL−S-3.60141e-133.54196e-13
保存されたlog履歴BE−L-0.0150503-0.0104709
保存されたlog履歴BE−S-0.0150503-0.0104709

各候補のBFが積分参照で増えても、増え方が同じとは限らないため、二候補の対数比Dは下がり得ます。今回の負の変化は2倍側を相対的に強める向きでしたが、選択の逆転、正解、音質改善を意味しません。元の端点文字列と表示値のCSV・元の集計JSONで確認できます。

有限な二候補比較では、3遷移とも符号が変わらなかった

保存Dの文字列をDecimalで負・零・正に分類しました。下の行列は行が置換前、列が置換後です。S→L、L→E、S→Eを個別に示します。負から正、または正から負への遷移だけを厳密な符号反転と数え、後から閾値は設けていません。

初期の事前分布(static)

S → L:有限309件
始点\終点負零正
負15400
零000
正00155

厳密な符号反転 0件

L → E:有限309件
始点\終点負零正
負15400
零000
正00155

厳密な符号反転 0件

S → E:有限309件
始点\終点負零正
負15400
零000
正00155

厳密な符号反転 0件

保存された履歴A

S → L:有限104件
始点\終点負零正
負9500
零000
正009

厳密な符号反転 0件

L → E:有限104件
始点\終点負零正
負9500
零000
正009

厳密な符号反転 0件

S → E:有限104件
始点\終点負零正
負9500
零000
正009

厳密な符号反転 0件

保存されたlog履歴B

S → L:有限309件
始点\終点負零正
負15900
零000
正00150

厳密な符号反転 0件

L → E:有限309件
始点\終点負零正
負15900
零000
正00150

厳密な符号反転 0件

S → E:有限309件
始点\終点負零正
負15900
零000
正00150

厳密な符号反転 0件

有限な比較では零のセルも、対角線以外のセルもすべて0件でした。反転した窓を列挙する配列も、全9組で空です。この範囲では、積分参照へ置き換えても選ばれる側は変わりませんでした。

優劣逆転0件は、固定二候補に限った観測です。全周波数候補の順位、再追跡後のF0、音質の改善や悪化を示す結果ではありません。

符号行列・反転窓配列のJSON · 同CSV

履歴Aの205窓は、無限大と未定義を分けて読む

staticと履歴Bは各309窓すべてでDが有限でした。履歴Aは有限104窓に加え、一方の候補の事前支持が零となる205窓があります。その内訳はD=+∞が141窓、D=−∞が64窓で、S・L・Eのすべてで同じでした。

この205窓では、E−Lなどの差は∞−∞となるため未定義(undefined)です。一方、符号行列は両方のDが有限の組だけを対象にするため、205窓を非有限(nonfinite)として別計上します。未定義なのは差、非有限なのは比較元のDです。欠測でも差0でもありません。

履歴Aで有限行列に入れない保存遷移
遷移+∞ → +∞−∞ → −∞差が未定義の窓
S → L14164205
L → E14164205
S → E14164205

有限な符号行列に入る窓数と、その中の正負の件数はAとBで異なります。この違いを積分近似だけの効果とは扱いません。今回の比較では、保存された各履歴をそのまま固定しています。

保存原本から計算と終了記録をたどれる

第1段は同じ既存の事前分布による積分対象について、正項級数・対数不完全ベータの経路と、再スケールした直接求積・積分区間の両端の残りを押さえる解析的上界の経路を照合しました。50桁から80桁へ進め、logBFの運用一致基準は10⁻⁹ natsです。全4180件がmatched_noncertifiedとなりましたが、これは数学的な誤差保証ではありません。

第2段は保存S・L80・A80と3つの事前分布だけを80桁で集約し、4180件と309窓を保存しました。符号の補足集計は保存Dの文字列を読むだけです。このHTMLでは数値を再計算していません。

第1段の3担当処理、第2段、符号補足はいずれも一回で終了しました。第2段の外側で確認した終了待ち時間は9.089秒、符号補足は0.215秒です。独立照合では実行記録と保存数値に不整合はなく、有限分の厳密符号反転0件も確認済みです。

原データ・入力と依存の固定情報・全担当の計算記録・終了証拠の一覧から原本へ進めます。大きい計算記録は可逆gzipで配布しています。canonicalとjournalは、拡張子が.json.gzでも展開後は1行1記録のJSON Linesです。その他のログの形式は一覧に記載しました。圧縮前のSHAは原本のbytes対応表に保存しています。

今回の結論ではPMLを維持する

この診断は、積分近似が固定二候補の得点差へ及ぼす大きさを示しました。有限Dは動いたものの優劣は逆転せず、音声品質やMOSは測っていません。PMLを変更する根拠にはせず、現在のベースを維持します。履歴の事前分布の差も、積分近似とは分けて扱います。