# 過渡の時間支持をどう扱うか：4方策と、後掛け包絡を次に比べる理由

2026-10-19 JST。既存の測定・一次文献・実行前仕様の要約。**後掛け30条件試行の結果は未取得で、改善した手法の報告ではない。** 現在の基準はPMLのままとする。

現PML・RAW_SHAPE・RAW_FULLの測定と音声は、[既存比較](https://hiroshiba.github.io/check-nonml-saikyo-vocoder/research/raw-envelope-risk-2026-10-19/index.html)を参照。RAW_FULLでは早期成分の低下と強部の損失が併存した。この交換条件が変わるかを、次の小規模な機構比較で調べる。新しい音声・品質指標を本稿の作成時に取得していない。

## 1. 既に確かめた範囲

- 1録音・+3半音・seed 0の固定区間では、観測に寄与する7本の合成応答（kernel）の実効maskが、DC/Nyquistを含む全14,343 binで厳密にM=1だった。元の64,720標本は不変で、訂正版の寄与分解は全9確認を通過した。最初の型仮定失敗は訂正版と分けて残している。
- [固定7本の根拠](../index.html#mask)では、row419/420の自己項と符号付き交差項を測った。交差項には打ち消しもあるため、自己項の順位を「独立原因の割合」と読み替えない。
- 別の9条件の保存maskでは、175セル枠・358,575 bin中、分数Mは7,000 bin、全周波数M=1のセルは38/175だった。固定7本の結果を全録音へ一般化できない。[段階Bの状態とmask集計](../index.html#pending)を参照。段階Bの旧寄与測定は停止記録を保持する。新契約による派生数値計算は全9条件で完了し、保存照合も完了した。待っているのは寄与解釈・公開のレビューであり、本研究要約では新たな寄与結論を用いない。

これらはF0の正解、物理的な無声判定、知覚品質の改善を示す測定ではない。

## 2. 先行研究の4方策

| 方策 | 一次資料にある構造 | 今回への効き方と限界 |
|---|---|---|
| **A. 遅いスペクトル形状と速い時間包絡を分ける** | Agiomyrgiannakis・Rosecは無声区間でスペクトル10 ms、包絡2.5 ms。HNMには色付け後の雑音へ時間包絡を掛ける先例がある。[A1][A2] | 包絡の更新間隔と作用位置を別々に設計できる。前掛けでは色付けの応答が時間方向へ広がる。後掛けにも側帯波・低域変化・共振の尾の切断があり、旧F0に同期した振幅変動の分離は保証しない。 |
| **B. 解析が実際に読む未来側を制限する** | CELPの非対称窓には観測終端を変える例がある。一方、同じ支持内の非対称化で情報時刻・重心を変える方法は、観測終端を早めることと異なる。[B1][B2] | 次の強部が特徴へ混入する経路を減らせる可能性がある。周期内位置への依存やスペクトル推定の不安定さが増え、隣接行統合・平滑化で未来依存が戻る場合もある。合成応答の尾は別問題。 |
| **C. 過渡を独立した成分として表す** | STNは正弦波・過渡・雑音を分け、時間伸縮時に過渡の位置と個々の幅を別に扱う。[C1] | 過渡の時刻をF0から独立させられる。ただし分解誤差、過渡パラメータ、音高編集時の対応規則が増える。論文の例を、そのまま今回の音声・+3半音の優位性とはみなせない。 |
| **D. 位相から局在時刻を読み、合成に残す** | 位相ボコーダーの過渡処理や再割当は、群遅延などからエネルギーの局在を求める。[D1][D2] | 窓内の位置情報を活用できる。窓が読んだ未来を消したり、重なったイベントを一般に分離したりする方法ではない。現PMLの最小位相スペクトルだけから原音の群遅延は復元できない。 |

ここでは、**解析が読む範囲・特徴の代表時刻・更新／参照時計・合成応答の範囲・測定窓の範囲**を区別する。細かいhop、時刻の再割当、後掛け包絡は、それぞれ違う箇所を変える。「高時間分解能」という一語で同じ解決策にまとめない。表の今回への適用判断は、先行研究と保存結果からの推論である。

## 3. 全M=1の固定例で、平均推定器を優先しない理由

PMLは雑音とパルスを対数領域で扱う方式であり、一般の分数Mを単純な加算混合と同一視できない。[P1] 仮に合成出力yを条件付き平均dと残差rに分けるなら、d=E[y|C]、r=y−dと定義する。CはF0、M、スペクトル包絡、配置などを固定した条件で、期待値はGaussian乱数について取る。

**全周波数M=1なら、理想Gaussianモデルでは乱数の符号反転に対して出力も反転し、条件付き平均は0になる。** 乱数のRMS正規化が符号反転で不変であることを含む。この固定7本では、平均を推定して引いても理想上は既存出力がそのまま残差となる。まず平均推定器を増やすより、既にある時間包絡の作用位置を比べる方が、変更要因を少なくできる。

平均0は、単一seedの波形・powerが0という意味でも、元F0に同期した分散・振幅変動がないという意味でもない。これは有限精度実装の期待値を厳密に証明した結果でもない。分数Mのある他条件へ平均0を拡張しない。

また、Gaussianを定数1に置いた出力を「平均」とする近道は使わない。真の平均が0のM=1でも、誤った固定枝bを残してb+a(y−b)とすると、平均(1−a)bを人工的に導入し得る。分数Mで正しい平均を求めるには、短い実乱数列、共有正規化、遅延、複素べきの分枝、DC/Nyquistを含む実装条件が必要で、その推定精度・費用は未解決である。

## 4. 次の30条件で変えるもの、固定するもの

**未実施計画：RAW_POSTCOLOR_M1を、5録音×音高0/−3/+3半音×seed 0/20261015の30条件で比べる。** 主比較は同条件の既存RAW_FULL。現PMLとRAW_SHAPEも含む旧90出力を参照し、新たに120出力を合成する計画ではない。悪化や対象セル0を理由に条件を選別しない。

- 対象は、実際に使う処理後maskの全2,049 binが厳密に1のkernelだけ。DC/Nyquistも含み、近似一致や丸めで対象を増やさない。不正な形状・非有限値・範囲外は停止理由とする。対象外はRAW_FULLの経路を維持する。これは機構識別用の切替で、Mが1へ近づくときの出力連続性は保証しない。少しでも分数MがあればRAW_FULLへ戻るため、連続VUVや一般に頑健なモデルを実現したとは主張しない。
- 対象kernelでは、Gaussianへの既存前掛けを外し、既存の色付け・位相・逆FFT・切出しの後、元の端部窓と重ね合わせの前に時間包絡を一度掛ける。F0、特徴、行参照、パルス時計、乱数の長さ・順序・値、正規化、端部窓・切出しは固定する。
- 包絡は既存の0.5 ms格子の原音由来power Aを整数絶対標本へ線形補間し、元の参照行のレベルLから a=√((A+10⁻¹²)/(L+10⁻¹²)) を作る。録音内の最後の格子以後は最後のAを保持する。録音外、またはAとLがともに10⁻¹²以下ならa=1。出力kernelの尾にも同じ時刻関数を読み、セル包絡の伸縮・周期的繰返し・利得制限・RMS再調整は加えない。
- **作用位置と、包絡を評価する時間支持が同時に変わる。** 既存逆FFTが捨てた尾は復活させず、遅延も二重に足さない。「同一支持のまま前後だけ交換」とは呼ばない。
- 追加乗算は元の逆FFT出力dtypeを保持し、その型へ丸めてから元の端部窓へ進む。float64への事前昇格で他の計算経路まで変えない。追加丸めを記録し、数式上の関係をbit同一性と混同しない。

線形な色付けをH、時間乗算をMₐとすると、一般にH MₐとMₐ Hは一致しない。後掛けは色付け後の尾へ直接作用できるが、良くなる向きは未確定である。さらに、**全セルに共通の絶対時刻包絡a(t)を色付け・配置後に掛ける場合だけ**、理想式では完成波形への後掛けと等価になる。今回のセル別Lや対象外kernelが混在する場合に、一つの共通ゲートと同一とは限らない。内部に配置したこと自体を新規性や安全性の根拠にしない。

## 5. 何を判断でき、何が残るか

予定する観測は、全30条件の対象セル・支持の被覆、既存と同じ帯域powerと閾値交差時刻、強部、全体RMS、低域、直接波形差である。固定した害の目安には、PML比の強部・低域損失1 dB超、−10 dB交差の遅れ2 ms超または新規未到達、全体RMS変化1 dB超を含める。自動MOS・F0・ASRなど未取得の評価を0や良好で埋めない。

- 早期成分だけ下がり、強部や低域も下がるなら、広い抑制の代償と解釈する。
- 強部が戻る一方で早期成分も戻るなら、交換条件が残ったと記録する。
- 両方が改善しても、固定表現内で作用位置・支持が効いた可能性まで。旧F0-AM分離や総合品質改善を結論にしない。
- ほぼ変わらない場合は、適用範囲・包絡の変動量・波形差を併記し、後掛け一般が無意味とは言わない。

保存は新30出力の全標本float64と必須観測を中心にし、旧90出力はSHAで参照する。全セルのmask件数・型・hashと包絡の再構成情報を残し、同一配列をseedごとに重複保存しない。seed間の一致は実使用値から照合する。必要な元配列は一度保存し、復元不能なhashだけを残さない。過去の実行環境のバイナリ同一性が未確認なら、その限界も明記する。

残る課題は、原音の旧F0-AM、レベルLの未来依存、分数M領域、側帯波・低域・共振の尾、過渡開始の正解、絶対音高編集、100録音以上での品質評価である。**30条件は機構を切り分ける予備試行で、採用判断の規模ではない。** 後掛けを選ぶ理由は原因識別のしやすさであり、採用期待が高いからではない。

## 一次出典

- [P1] [Degottex・Lanchantin・Gales (2016), PML、§2.2–2.3](https://www.isca-archive.org/ssw_2016/degottex16_ssw.pdf)
- [A1] [Agiomyrgiannakis・Rosec (2008), §4](https://www.isca-archive.org/interspeech_2008/agiomyrgiannakis08_interspeech.pdf)
- [A2] [Stylianou (2001), HNM、§II-A・III-C](https://www.ee.columbia.edu/~dpwe/classes/e6820-2007-05/papers/Styl01-hnm.pdf)。有声雑音の包絡はpitch同期であり、旧F0-AM分離の証拠ではない。
- [B1] [Florêncio (1993), 非対称窓とCELP、§3–4](https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2016/02/AsymWindowsCELP_icassp93.pdf)
- [B2] [Su・Wu (2016), §2.3・定義2.1–2.2](https://arxiv.org/pdf/1606.09047)
- [C1] [Verma・Meng (1998), STN、§2–4](https://dafx.de/paper-archive/1998/VER34.PS.pdf)
- [D1] [Röbel (2003), 位相ボコーダーの過渡処理、§2–4](https://www.dafx.de/paper-archive/2003/pdfs/dafx32.pdf)
- [D2] [Fitz・Fulop, 再割当、§3–5・8（2005原稿、2009公開）](https://arxiv.org/pdf/0903.3080)
