高域を消す場合と位相を崩す場合で、ViSQOLはどう応答するか

集計確認:2026年10月26日 02:00(日本時間)。固定120録音・40話者に対する2摂動の診断です。

Apron24を維持します。今回測ったのは原音に加えた人工的な変換で、ボコーダーの順位を更新する実験ではありません。完全対応の36話者108録音では、位相ランダム化のMOS-LQOが高域除去より平均0.524739低くなりました。ただし人間の評点差や、全40話者の平均とは解釈できません。

現在のベース・既存比較対象の採否は変えない

方式の比較範囲
方式役割既存UTMOS平均今回のViSQOL
Apron24現在のベース3.284956(2位)未測定
Apron4848 kHz候補3.336981(1位)未測定
WORLD48既存比較対象3.214918(3位)未測定

上表の値は前回の固定120録音比較を再掲したものです。前回は指標間で結果が分かれました。UTMOSと今回のMOS-LQOは別の指標であり、数値を同じ順位表へ混ぜません。

240枠のうち、8枠は採点前の範囲超過だった

高域除去と高域位相ランダム化は各120枠。各116枠が採点でき、合計232枠の実採点入力・生の結果・コードを保持して照合しました。残る8枠はPCM16化の範囲を超えたため、CLIを起動していません。未適用・未実行のまま残った枠・不明はありません。

失敗したのはp228_082、p282_004、p285_006、p311_249の両条件です。元区間の絶対最大値は約0.999でしたが、変換後は1を超えました。クリッピング、音量低下、seed変更による救済はせず、失敗理由と変換前後の診断を残しています。

両条件の値があるのは116録音です。主集計では3録音が全て揃う36話者の108録音を用い、残り8録音を主平均へ混ぜません。欠測のある4話者を除いた部分集合の結果です。

補助得点は下がったが、帯域別の符号は混在した

主集計:36話者・108録音。話者内3録音を平均し、話者を等重み
条件MOS-LQO平均
高域除去3.140287
高域位相ランダム化2.615548
位相ランダム化 − 除去−0.524739

話者平均の対応差は34話者で負、2話者で正でした。無変換音声の自己採点はしていないため、原音からの低下量ではありません。主証拠は次の32帯域の類似度fvnsimです。MOS-LQOは補助値として併記します。

最大の絶対平均差は中心10.261 kHzの−0.454765でした。中心13.637 kHzでは負、15.714 kHzでは正で、どちらも36話者全てが同じ符号です。高域全体が一様に悪化したとは言えません。

解釈の限界:操作したDFT成分は12 kHz超ですが、指標の帯域は鋭い境界で分かれていません。中心周波数だけで観測範囲を決めず、音圧合わせ・時間整列・下限処理の影響も分離しません。2条件ではエネルギーも時間構造も異なります。

全32帯域の対応差を開く
fvnsim:位相ランダム化 − 除去。符号件数の分母は36話者
中心周波数 kHz平均差中央値負零正
0.050-0.002632+0.0000009027
0.092-0.002674+0.0000004032
0.140-0.002646+0.0000004032
0.195-0.002429+0.0000019027
0.258-0.000383+0.00001111025
0.331+0.001030+0.00000810026
0.415+0.000355+0.00000411025
0.512+0.000151+0.00000810026
0.622+0.000048+0.0000098028
0.750+0.000017+0.00000612024
0.896+0.000017+0.00000214022
1.065+0.000052+0.00000216020
1.259+0.000132+0.00000411025
1.481+0.000131+0.0000079027
1.737+0.000031+0.0000025031
2.032+0.000047+0.00000610026
2.370+0.000067+0.0000068028
2.760+0.000052+0.00000113023
3.207+0.000025+0.00000113023
3.721+0.000078+0.00000110026
4.313+0.000125+0.00000211025
4.993+0.000070+0.00000115021
5.775+0.000048+0.00000211025
6.673+0.000030+0.00000214022
7.707-0.003268-0.0000273204
8.895-0.136567-0.1172303600
10.261-0.454765-0.4408263600
11.832-0.353470-0.3455403501
13.637-0.232918-0.2280533600
15.714+0.135455+0.1381510036
18.100+0.040958+0.04709514022
20.845-0.096634-0.15382326010

fvnsim10・fstdnsim・fvdegenergyは別の診断量として、全個票と集計JSON(gzip)に併記しました。帯域を選び直した検定、合否閾値、総合順位は作っていません。

採点に渡した音声をそのまま掲載する

従来から固定していた3録音の同じ区間です。WAVの再生成や掲載用の音量調整はしていません。出典・許諾・改変表示

p225_029(1.796秒)

参照区間

高域除去

高域位相ランダム化

p226_061(4.319秒)

参照区間

高域除去

高域位相ランダム化

p227_065(4.223秒)

参照区間

高域除去

高域位相ランダム化

事後診断:記録された整列が同じ101録音でも差が残る

主結果を見た後、保存済みの全体遅延と区間対応を調べました。両条件が成功した116録音で、記録された全体遅延とpatch数は全件一致しました。各patchの参照・比較開始/終了時刻まで一致したのは101録音で、15録音では時刻配列に差がありました。差のある15録音のうち12録音は約1標本(1/48000秒)、残る3録音は約0.599・0.64・0.8秒の差でした。全体の最大差は0.8秒です。

記録整列が同じ101録音でも、中心10.261 kHzの類似度差は全て負でした。録音等重みの平均差は−0.442167です。したがって、低下が記録patch時刻の異なる15録音だけに集中したという説明では足りません。

これは事後に作った録音群の記述で、36話者108録音の主集計とは別です。整列処理全般の因果影響を除外したわけではなく、音圧合わせ・下限処理・帯域の重なりも分離していません。新しい音声変換や採点は0件です。116録音の対応記録(JSON gzip) / 事後診断の範囲

短い録音の結果と、測定の限界を分ける

実区間が3秒未満の39録音では38録音が対応可能、3秒以上の81録音では78録音が対応可能でした。長さ別の等重み話者集計は、それぞれ25話者37録音と35話者73録音です。主集計とは集合が異なり、区分間の差を録音長の効果とは扱いません。

ViSQOL v3.3.3の固定commitを、依存2ファイルへ標準ヘッダーを各1行足した互換ビルドで使用しました。公式無修正版との数値的同等性や、短い生成音声に対する人間評定との校正は確認していません。

入力は先に同じ区間へ切り、全区間DFTの12 kHz超を除去するか、振幅を保って位相を固定乱数で置き換えました。この周期境界を持つ非因果的な操作は、実用フィルタや自然な雑音源の再現ではありません。量子化後の振幅保存も厳密ではありません。実行前の議論と計画、固定条件と照合範囲を参照してください。

次は実方式の保存音声へ適用できる条件を揃える

この診断から分かるのは、固定した2摂動への採点器の応答です。高域パワーが戻っただけで音質が改善したとは決めず、32帯域と補助得点の不一致を残します。次はApron24・Apron48・WORLD48の元出力を再合成せず利用できるか、保存範囲と同一入力の照合条件を確認します。未回収の格子比較や自然位相比較の保存問題が解決したことにはしません。